朝ドラ「虎に翼」では、女性弁護士を目指す主人公・寅子の生涯が描かれます。市川ジュンさんの漫画『この星の夜明け』でも、寅子と同じように、弁護士を目指す女性・旭が主人公です。
「虎に翼」を見て、久しぶりに『この星の夜明け』を読み返しました。やはり面白く、そして考えされられる物語でした。
『この星の夜明け』あらすじ
旭は罪を犯した親友を救うため、教師の道を捨てて女性弁護士への道を目指します。
法律を学ぶ大学では女子部が設立されたものの、まだ女性の法曹界への門戸は狭く、旭は苦戦を強いられます。
それでも持ち前の明るさと聡明さ、巧みな弁舌ですこしずつ道を切り開いていくのです。
女が「無能力者」と言われた時代
明治から戦前、日本近代は女性の権利は著しく損害されていました。
- 女性戸主への相続が認められない
- 妻は相続に関して権限を持たない
- 浮気は女性だけ罪になる(姦通罪)
『虎に翼』にもありましたが、当時の民法には「相続等に対し妻は無能力者」と明記されているのです。
また、未成年の女性は家督を相続することができません。(相続しても爵位は夫のもの)
依頼人である伯爵家の令嬢は、成人前に無理やり従兄弟と結婚させられそうになります。彼女は家の権利を奪われることを嫌い、それを阻止するよう旭に依頼します。
旭は叔父側の強行的な手段を逆手に取り、訴訟を起こすことで時間を稼ごうと試みるのです。
また、雇い主に強姦されそうになった女性を法律の知識でやり込めるところは痛快でした。いくら女に厳しい当時の法律でも、強姦は罪になるんですね。ただ、訴えがなかなかできないってだけで…。
子供や女性など、弱い立場の人々を法律を駆使して(時に暴走しつつも)正義を貫く旭の姿に惚れ惚れします。
市川ジュンの描く女性像
市川ジュンさんの漫画には、時代に抗い自由を求めて戦う女性たちが描かれます。
対象的な二人の女性、卯野と咲久子の半生を描いた『陽の末裔』。ここでも、女相続人となった咲久子が相続問題に突き当たる場面が描かれます。
当時の法律だと、女では家の財産が自由にならないため、財産をしっかり使い切ってから伯爵家に嫁入りします。
それぐらいの機転と才覚がないと女性不利な世の中を渡っていけないのでしょうね。
市川ジュン作品感想
- この星の夜明け…昭和初期に弁護士を目指す女性を描いた物語
- 陽の末裔1…大正時代、卯乃と咲久子、対象的なふたりの少女の物語が始まる
- 陽の末裔2…財閥令嬢と新聞記者。立場が違っても友情は続く
- 陽の末裔3…恋に苦しむ卯乃と、敵を完膚なきまでに叩きのめす咲久子
- 陽の末裔4…結婚で地位を得る咲久子と、当時の娼婦の自由廃業について
- 陽の末裔5…婚家を乗っ取る咲久子と、女性問題に目を向ける卯乃
- 陽の末裔6…暗雲の中の太陽の娘たち
- 陽の末裔7…逆境すらも糧として成長してゆく
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