『陽の末裔』の最終巻。7巻すべての感想を書く作業、大変でした。でも、どうしてもこれだけは書いておきたかった。
抑圧されながらも激動の時代を生き抜いた、太陽の末裔の女性たちの物語は、私にとってのバイブルでしたから。
そして、ぜひ、若い世代の女性たちにも読んでみてほしい漫画です。
『陽の末裔7』あらすじ
咲久子は夫・深草子爵が海外で行方不明になるが、事実上の財閥当主として事業を展開してゆく。卯乃は女性解放運動を続けていたが、とうとう特高警察に拘束されてしまう。
卯乃の釈放の引き換えに夫は戦場へ。それでも咲久子はさらなる事業の高みを目指し、卯乃は状況を伺いながら夫の帰りを待ち続ける。
やがて東京に空襲がはじまり、ふたりは大切なものを失ってしまう。
すべてを糧として、自ら輝く
まだ婦人参政権もなく、女は家の「所有物」であり自由がなかった時代。あるがままに生き、自由を手に入れるために戦った咲久子と卯乃。方法は違うけれど、魂のあり方は同じ。
咲久子は奔放で。時に人を傷つけてでも前に進んでいく姿は、女性たちに非難を受けます。しかし、卯乃は「咲久子こそ、生まれながらの太陽だった」と言い放ちます。
まあ、ライバルとして担ぎ上げられた宮家出身の伊布院公爵夫人を、ヤミ物資を餌に貶めることもやってましたが。財産や愛するものを失っても、それすらも糧として成長してゆくのです。
それこそが太陽の末裔たる女性たちの力なのでしょう。
『陽の末裔』を読み返して
久しぶりに読み返してみて感じたのは、『陽の末裔』には当時の社会問題や文化・風俗が詳細にに反映されていたことでした。
製糸工場の過酷な労働や労使問題、娘の身売りや娼婦の廃業など。当時の社会問題をからめつつ、二人の生き方を描いています。
また、咲久子が直面した当時の女性の相続権利なども法律を絡めて紹介しています。いかにこの時代、女性として生きることが大変かを表しています。
少女漫画が与えてくれたもの
思えば、私は若い頃に読んだ漫画によって、ものの考え方や人生を学んだ気がします。
『陽の末裔』『はいからさんが通る』では、レトロでかわいい大正文化や、女が自由に生きることの難しさと、それを打破する強さを。『親なるもの 断崖』からは娼婦の悲惨すぎる運命を。
まだまだ差別が大きかった昭和時代、少女漫画から女性の自由な生き様を学ばせてもらった気がします。
懐古的洋食事情
『陽の末裔』シリーズの外伝、『懐古的洋食事情』。こちらは当時の洋食をモチーフにした短編集。咲久子と卯乃以外の登場人物たちが活躍します。
コメント