それぞれの道を歩き始めた咲久子と卯乃。咲久子は高島家の令嬢として社交界に華々しくデビュウを飾るのです。
一方、卯乃も製糸工場を辞め新聞社の女性記者として働き始める。
『陽の末裔2』あらすじ
美しく成長した咲久子は社交界の華となり、多くの男性と浮き名を流す。しかし、どんな男と付き合おうとも、彼女の誇り高さは揺るがない。
一夜をともにした相手からの求婚を断り、家と妻を捨てるといった御曹司には「家と財産がないなら」とあっけなく袖にしてしまう。
そんな咲久子の前に現れたのが運命の相手・深草子爵。咲久子は深草子爵に自分と似ているものを感じながらも、だからこそ簡単にはなびかない。
卯乃は高島家の息子・森に惹かれるが、彼が高島家と血がつながっていない社会運動家の息子である事実を知ってしまう。
そんな時、東京を大地震が襲い、高島の父が重症を負う。自分の立場が危うくなった咲久子は…。
奔放な咲久子と純粋な卯乃
咲久子の魔性っぷりが発揮された巻でした。大胆で華麗に男を手玉に取っていきます。
咲久子は美貌に加えてビジネス知識をもち、男性と対等に会話ができるからモテるんでしょうね。
そんな奔放な咲久子に、上流階級の女性たちはさすがにいい顔をしません。元クラスメイトの忍に問われたときも「決めるのは自分だ」と突き返します。
それでも咲久子の存在は、主張すること無く生きてきた令嬢に影響を与えていきます。彼女は「自分の思ったように行動する、そんな生き方があるなんて知らなかったわ」と心を吐露します。
「ほとんどの女性が(自分の意のままに行動することを)思ってもいないのでしょうよ」と、咲久子。
卯乃もまた、女性記者たちと行動をはじめます。
「嫁は家に従属して、苦労するのが当たり前」という当時の常識を「負の連鎖」だと感じて、女性の立場を変えようと努力します
世界を変えるには、まず「当たり前」を疑うこと、少しずつ変えていくのが卯乃の生き方です。
一方で卯乃は工場時代から親切にしてもらった高島森に惹かれていきます。彼が何気なく送った白いバラに涙します。
そのあと咲久子が男たちから贈られたのは大輪の赤いバラ。ここでも2人の対照的な生き方が表されています。
でも、どちらも目的は同じ。「女が自分の意志で人生を生きること」を目指しているのです。
懐古的洋食事情
『陽の末裔』シリーズの外伝、『懐古的洋食事情』は当時の洋食をモチーフにした短編集。咲久子と卯乃以外の登場人物たちが活躍します。