『陽の末裔4』市川ジュンでは咲久子がいよいよ結婚。そのお相手は?卯乃と森の生活にも変化の時が…。
『陽の末裔4』あらすじ
卯乃は仕事と森の生活にすれ違いを感じ、森もまた、社会主義思想と卯乃への思いに揺れる。
そんな中、卯乃の妊娠が発覚。咲久子は深草子爵の元夫人をやり込めたが、子爵が元夫人に残す思いを知り、嫉妬にかられる。
画家の九門京也にも同属嫌悪と愛情ともつかない感情を抱いていく。
一方で咲久子は、財産を自由に使えない女性相続人の現状を打破するため結婚を決意した。しかしそれは、深草子爵ではない男性だった。
娼婦の自由廃業
卯乃は苦労の末におひでを娼婦から廃業させることに成功します。実は届出を出しさえすれば廃業自体は簡単なのですが、楼主やヤクザなどが脅しや暴力で阻止しようとするので簡単にはいかない。
そして、ようやく自由の身になれたおひでを、家の者たちは「やっかいもの」として扱います。
古い家制度では、女は道具。だから身を売ろうとも食い扶持を減らし、家に仕送りをするのが当然だという考えなんです。それは貧しさゆえのことではあるのですが…。
高みを目指す咲久子
他の女たちを尻目に、咲久子はさらなる高みを目指します。
もともとの目標だった実家の土地を買い戻し、成人後は高島家の財産が自由にならないと知ると、財産を結婚費用にあてて華族の妻の身分を手に入れます。
いや、すごいですね。咲久子…。彼女に弱点があるとすれば、卯乃なのでしょう。
義理の兄である森にモーションをかけるものの、それが原因で卯乃が傷つくと「卯乃ちゃんを失くすなら、お兄さまを捨てるわ。平気で。」と言ってのけます。
卯乃も行き詰まっていたとはいえ、咲久子が原因で森との仲が決裂したのに。あっさりと許しています。このふたりには男などが入り込めない、強い絆があるのでしょうね。
懐古的洋食事情
『陽の末裔』シリーズの外伝、『懐古的洋食事情』は当時の洋食をモチーフにした短編集。咲久子と卯乃以外の登場人物たちが活躍します。
市川ジュン作品感想
- この星の夜明け…昭和初期に弁護士を目指す女性を描いた物語
- 陽の末裔1…大正時代、卯乃と咲久子、対象的なふたりの少女の物語が始まる
- 陽の末裔2…財閥令嬢と新聞記者。立場が違っても友情は続く
- 陽の末裔3…恋に苦しむ卯乃と、敵を完膚なきまでに叩きのめす咲久子
- 陽の末裔4…結婚で地位を得る咲久子と、当時の娼婦の自由廃業について
- 陽の末裔5…婚家を乗っ取る咲久子と、女性問題に目を向ける卯乃
- 陽の末裔6…暗雲の中の太陽の娘たち
- 陽の末裔7…逆境すらも糧として成長してゆく
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