関東大震災から2年。高島家を相続した咲久子、想い人だった森と結ばれた卯乃。それぞれの人生を歩んでいます。
『陽の末裔3』あらすじ
高島家を相続した咲久子は、後見人を差し置いて事業を発展させるだけでなく、さらなる野望を抱く。しかし、女相続人の権利の限界を感じてもいた。
そんな時、深草子爵が連れてきた若い画家・九門京也と出会う。彼もまた、深草子爵と同じく不遜で大胆、その後の咲久子の人生に大きく関わることに。
卯乃は娼婦たちの現状を記事にすべく、妓楼を訪れるとそこには同じ製糸工場で働いていたおひでの姿が…。おひでは製糸工場のスカウトの男にたぶらかされ、男のために身を売っていた。
私生活でもパートナーとなった森との生活と仕事、彼の仲間たち(共産主義者)の女性蔑視の発言を耳にして失望するなど、幸せな生活に少しずつ疲弊していく。
大正時代の社会事情
大正時代から廃娼運動が活発化し、届け出をすれば足抜けができるようになりました。しかし、店の折檻や家族の借金など、実際にはなかなか難しかったそうです。
廃娼運動には柳原白蓮も参加しており、実際に彼女を頼って吉原を逃げ出した遊女・森光子(女優の森光子さんと同姓同名)さんの手記も残っています。
客の中には、娼婦を下に見て説教をする男もいたそうです。しかし、偉そうなのにしっかりとヤルことはやってったんですってさ。けっ。
卯乃の挺身
『陽の末裔3』を読み返してみて、卯乃がかなり無理をしているなと。共産主義に手を染め、いつまた自分の元を去るかわからない森に対して尽くすんですよ。
仕事はもちろんがんばるし、家事もきちんとこなそうとする。、仲間が来たら料理なんかもだしちゃったり。
卯乃ちゃん…。あんたそういう尽くすばかりの女たちを救うために活動してるのでしょうが…。先進的な考えの卯乃ですら「家事を男に任せる」という考えにはまだ至らいないんですね。
まあ、好きな男に尽くしたい気持ちはわかるけれど、無理をすると後で大変なことになるんだよなあ…。
咲久子無双
今回も咲久子無双が炸裂します。自分の出自をバラして貶めようとした深草子爵の元夫人に「わたくしの価値はわたくし自信だわ」と言ってのけ。
しかし、それだけでは気がすまなかった咲久子。今度は九門京也に協力させて元夫人の弱みを握り完膚なきまで叩き潰します。
いやもう、咲久子を敵に回したくはないですね…。
しかし、彼女のすごいのは自分の言動で相手がどう感じようが、動じないんです。言い方悪いけれど「自分のケツは自分で拭く」ことができる人です。
その強力な磁力のような存在に、ある人は引き寄せられ、ある人は反発するのでしょう。
懐古的洋食事情
『陽の末裔』シリーズの外伝、『懐古的洋食事情』。こちらは当時の洋食をモチーフにした短編集。咲久子と卯乃以外の登場人物たちが活躍します。