『懐古的洋食事情2 東京ハヤシライス異聞』市川 ジュン

ハヤシライス 大正
ハヤシライス

懐古的洋食事情 2』の舞台は大正から昭和初期。ハヤシライスなどの洋食が庶民の間へ浸透してきた時代のお話です。
陽の末裔』の関連人物が登場しますが、独立した話なので本編を知らなくても楽しめます。

著:市川ジュン
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東京ハヤシライス異聞(大正13年)

女流歌人のるい子さんと国文学者の新平さんは、当時珍しい恋愛結婚。

幸せな結婚生活とおもいきや、るい子さんはまったく料理をしたことがない。義弟の総二くんはそんなるい子さんの料理に毎日ケチをつけている。

しかし、るい子さんは気にする風でもなく毎日新しい料理にチャレンジしていく。

そんな中、余った材料で野菜炒めを作り始めたが、いろいろな材料を投入していくうちに今までにない料理に仕上がって…


るい子さんは『陽の末裔』の主人公卯乃の提唱した「女たちの会」の会員でもあります。

ビスケット浪漫す(昭和2年)

幼なじみの「もえ」が東京の奉公先から近くの鎌倉山で働くことになり、様子を見に行く竜介。

もえが働く館の主は、どんな女性よりも美しい画家・九門京也だった。

食の細い京也のために手作りのビスケットをつくるもえ。そんな姿に竜介はやきもきして…。


鎌倉山の別邸は『陽の末裔』でもいろいろな事件が起こるのです。もえさんも本編にちょっと登場します。

シチュー・ラプソデー(昭和3年)

銀ブラ(文字通り、銀座をブラブラ散歩すること)していた家事手伝いの蕗子。そこで出会った岡倉財閥の跡取り、喜一にランデブー(デート)に誘われる。

たくさんの女性を相手にする喜一だが、おっとりとした蕗子にはどうもペースが乱れがち。

蕗子は蕗子で、喜一の特別な思い人・咲久子にライバル心を燃やし、喜一に手作りのシチューを作ることで対抗しようとする。


喜一さんは『陽の末裔』で咲久子の恋人兼右腕のような存在。

咲久子の個性が強いので、奥さんにするならおっとりした(天然の)蕗子さんがお似合いかもしれません。

ビーフステーキ ア・ラ・モード(昭和2年)

深草子爵邸の末弟・明之くんと兄弟たちは、嵐の別荘でお腹を空かせていた。

使用人もいない、材料もない事態に明之くんは隣の別荘に助けを求めに行き、そこの円城薫子さんに食材と簡単な料理法(ステーキ)をもらう。

その後、成長した彼はすっかり秘密の趣味・料理にはまっていた。ある日、使用人の留守中に明之くんが料理をしていいると、元へ兄深草子爵が恋人を連れて来た。

それはなんと、初恋の人薫子さんで…


当時は男性が厨房に入ること自体がまれなことですから、いいところのお坊ちゃんが料理をするなんてとんでもないことだから「秘密」なんですね。

コッヒー・ハウス・ヒル(大正9年)

横浜にある半世紀続いたコッヒー(コーヒー)ハウス。
娘のらん子は「自分は店の跡取りのための養子で、男と間違われて貰われたのだ」と父から聞かされてグレてしまった。(でも仲はいい)

そんなある日、父親の本当の息子がドイツからやってきた。

店を継ぐ気は無かったらん子だが、ライバルの登場に俄然やる気をみせ、コッヒーの入れ方を勉強しだす。幼なじみの吾朗はらん子の練習台にされてしまうのだった。


吾朗は『陽の末裔2』で咲久子の最初の男として登場する軍人です。こちらではかっこいいんですけどね。

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