『懐古的洋食事情 5 大正洋食倶楽部』市川ジュン

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懐古的洋食事情 5 大正洋食倶楽部』では本編『陽の末裔』のキャラクターたちも登場します。明治のアイスや大正の料理倶楽部、戦後のハンバーグなど。

著:市川ジュン
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振り袖に氷菓子(明治41年)

氷菓子とは「アイス」のこと。佐和子の家は高利貸し。

そのため女学校では「アイスクリンの姫」と陰で呼ばれていた。(高利貸し→こおりがし→氷菓子→アイスクリン)

すっかりひねくれていた佐和子だが、新任の英語教師・有馬の風変わりの授業のおかげですこしずつ彼女の氷もとけていく。

しかし、有馬は佐和子の家とある因縁があり…


冷凍技術が発達していなかった昔、アイスクリンはそれは貴重なお菓子でした。

横浜では明治時代のアイスクリンを再現しているお店もあるらしい。食べてみたいです。

文化的ホールクコットレットの乱(昭和2年)

二葉はカツレツが得意なモダンな奥様。夫の冷たい態度が気になるものの、つとめて普段通りふるまっていた。

しかし、夫の愛人・小はんが「子どもができた」と乗り込んできた!そんなとき二葉さんがとった意外な行動とは…


当時は夫の浮気は法的にも責められませんでしたが、昭和初期にようやく見直され始めました。朝ドラ『虎に翼』にも出てきたように、二葉の友人が女性弁護士を目指しているのも時代を反映しています。

昭和初期に活躍した女性弁護士の物語『この星の夜明け』

大正洋食倶楽部(大正13年)

中丸子爵家に嫁いだ深草子爵の妹・静子は「ごはんも炊いたことがない」深窓の令嬢。

関東大震災を経験し、有事に備えて料理くらい作ってみたいのだが、沢山の使用人がいるので難しい。

ある日、義母である子爵夫人に連れられて行ったサロンはなんと料理教室!そこは上流階級の夫人たちが「料理をつくるための倶楽部」だった。

すぐに料理の腕をあげた静子は、倶楽部の活動を通して震災にあった人々へのチャリティー活動を計画する。


静子さんは別のお話『ビーフステーキ・ア・ラ・モード』にも登場するのですが、その時はまったく料理ができず、末弟の明之くんにまかせきりでした。

ハムの誘惑 ワインの貞操(昭和2年)

鎌倉ハムの伝統を受け継ぐ若宮商会の長女・ちよには秘めた思いがあった。

10年前、桜町伯爵家の別荘で出会った一人の人を思い続けていたが、伯爵夫人の事故死により、別荘は閉ざされたままだった。

久しぶりに明かりがともった屋敷を訪れてみると、そこには桜町家の成長した息子・洸が滞在していた。


緑の下でワインとハムの食事。お互いの思い出を語り合う2人。美しく切なく、おそろしい思いが交錯するします。

ハンバーグ・アプレゲール(昭和26年)

これだけ戦後のお話。デパートの宣伝課に勤める南部唯子は、元子爵家の令嬢だが母は渡米中。現在はお肉を節約するためにハンバーグを拵えるほどの庶民ぶり。

唯子は女子だけの不当な大量解雇に反対し会社側へ撤廃を要求する。そんな時、デパートの能天気な跡ととり息子七星専務と知りあう。

専務は唯子に惚れて求婚しようとするが、唯子は解雇撤廃のためストライキを決行することに。


唯子はあの咲久子の娘だけれど、庶民感覚を持ち合わせています。弟の玲は咲久子と九門京也との子で画学生になっています。

しかし、咲久子が帰ってきたらデパートごと乗っ取られそうですね…。

ライスカレーの永遠(昭和2年)

銀座にある自由軒は女性三代が切り盛りする洋食屋。特にライスカレーが絶品と評判のお店。厨房は祖母と母、そして看板娘の「るな」。

場所柄ブルジョワから職業婦人、芸術家など客層は多彩。

そんな客のひとり、岩室財閥の御曹司・真人は「るな」の恋人。ある日、真人からプロポーズを受けるが、それは親子三代で続いた自由軒を継げなくなるということだった。

仕事と結婚、人生の岐路に立たされた「るな」が選んだのは…


最終回だからか、深草子爵や京也、操さんや卯乃など『陽の末裔』のキャラクターたちが登場します。

ずっと書きたかった「懐古的洋食事情」の感想がやっと書けました。ずいぶん前に買った漫画ですが、電子書籍で再販されたので感想も書き直しました。

市川ジュン作品感想

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