『慶応三年のフルコース』市川ジュン

歴史

慶応三年のフルコース』は「懐古的洋食事情」の番外編。今度は幕末の洋食事情です。

以前に明治初期の洋食事情がでてきましたが、幕末はもっとすさまじいです。

なにせ牛や豚などは今まで料理したこともなかった時代ですから…。

著:市川ジュン
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慶応三年のフルコース

慶応三年、横浜。死んだ父親から西洋料理を仕込まれたおりせは、父親並の腕を持つ料理人。そんなおりせの店に外国奉行所の役人・堀がやってくる。

堀は将軍慶喜が西洋人をもてなすためのフルコースをつくれる料理人を探してた。「女である」ことを理由におりせの推挙を断るが、なんとおりせは男装して堀を説得。

なんとか料理人になることができたおりせは、正体を隠しフランス人シェフ・ジャンとともにフルコースづくりに励むが…。


慶喜が西洋人をフランス料理でもてなしたことは史実です。でも、もしかしたら、その裏側ではこんなことが起こっていたのかもしれませんね。

オランダ五番館の料理人

医者の家に嫁いだ武家の娘・まさのは、足しげく横浜の居留地に通う夫に西洋人の恋人いるのではないかと疑う。

女性から夫を取り戻すため、まさのは意を決して居留地へと向う。

居留地でハーフの医者・あれくと知り合いになり、夫のもとへと案内してもらうまさの。しかし、夫が夢中になっているのは西洋の女性でもなければ医術でもない、西洋料理だったのだ。


この頃、横浜ではじめて牛の解体が行われたそうです。洋食は日本人の栄養改善と、欧米列強に追いつくための手段でもあったんですね。

馬車道開国亭

横浜の商家の娘・なをは、居留地で写真館を営む叔父・蓮十郎のもとに足蹴く通い、新しい時代の空気に触れるのが好き。

今日も叔父の写真館に遊びに行くと、そこには幕末の英雄・坂本竜馬が。

なをは竜馬に誘われ西洋料理屋へいくものの、彼女の髪型をみて「らしゃめん」と勘違いした西洋人が竜馬と一色触発状態に。

それを止めに入ったのは奉公していた幼なじみの琢郎だった。

すっかり竜馬に参ってしまったなをは琢郎の力を借りて、竜馬のために西洋料理をつくることに…。


「らしゃめん」は西洋人向けの高級娼婦のこと。当時、外国人居留地を歩く若い女性は少なかったので勘違いされてしまったのでしょうね。

長崎ばんけっと

長崎奉行も務めた犬村家では愛娘・晴姫の結婚式を西洋式にとり行うことになった。そのため、知り合いの英国人から料理人を借り受けることに。

しかし、料理人・有吾は腕はいいが無口で無愛想。

屋敷の料理人たちに西洋料理を教え始めるが、なぜか姫君も料理づくりに加わっていた。料理を通じ、すこしずつ心を通わせてゆく晴姫と有吾。

そんなとき、晴姫の許婚が突然城を訪れることに…


明治になっても西洋料理のコックは貴重だったので、貧乏な大名の息子と結婚するよりもよほど幸せだったのではないでしょうか。

晴姫のふんわりしていながら意思の強い姿がすてきです。

幕末洋食の動乱

新撰組とも親しい医師・松本良順の身内であるえまは、医術の心得もある女性。動乱の京都に残り医療活動を行う許婚を訪ねて江戸からやってきた。その途中、喀血している若い男性と出会う。

実は彼はあの沖田総司で、許婚のもとへ結核の治療に通っていた。

沖田の小食ぶりを心配したえまは、当時食され始めたばかりの牛の肉を使い、沖田のために料理をつくる。


歴史的事実や人物など出てきますが、もちろんフィクションです。でも、どの女性たちも新しい時代を自由に生きていこうとしているのがすてきです。

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