『星のオペラ』羽海野チカ

星空 SF・科学

『星のオペラ』は、「ドラえもんの道具をつかって物語を作る」というテーマで作られた短編。
あたたかくてかわいらしくて、切なくて、何度も何度も読み返しています。

ハチミツとクローバー10巻に掲載されています。

著:羽海野チカ
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『星のオペラ』あらすじ

ハルは赤ん坊の頃に捨てられ、小さな辺境の星にたどり着いた。その後、現地のイグルー族の両親に引き取られ、大切に育てられてきた。

けれども、幼い頃から頭の中に黒い虫が広がる夢をみるたび、悲しくなってしまうのだった。

やがて賢い青年に成長したハルは、パパから星の外の大学に行くよう勧められる。

ハルは大学で、自分と姿形がよく似た女性・愛子に出会う。彼女は「地球」と言う星からきた留学生で、お互いの星のことや言葉を教えあった。

ハルが地球の言葉にふれるうちに、夢の中の黒い虫が「文字」であることを知る。その夢の文字の意味を理解した時、ハルは…。

長編のような読み応え(ネタバレ)

短編なのに、長編漫画を読んだような読了感と満足感がありました。

最後にハルの頭に浮かぶ文字が「言葉」だとがわかるのですが、それはずっと捨てられたと思っていた両親からの愛の手紙だったんです。

宇宙船の事故でもう助からないと悟った両親は、せめてハルだけでも逃がそうとします。その時、自分たちの思いを手紙に託して暗記パンに移して食べさせるんです。

そこには、両親のハルへの思いが綴られていました。いやもう、ここは何度読んでも泣けます。

言葉を理解する前に別れてしまったので、ハルには文字が黒い虫に見えてしまったんですね。

やがてハルは医者になり、妻となった愛子とともに故郷へ。両親からの愛を受け止めながら家族を慈しみ、地域の人のために尽くします。

いやもう、本当にすごい。短編なのに設定がすごく細かい。ハルが作る漁の仕掛けや植物の栽培とか、愛子さんが少数民族学が専攻だからハルの故郷に興味をもったのが仲良くなるきっかけとか。

あと、育てのパパとママの愛が深いんです。ママが病気で早くに亡くなり、パパがママの木の像を掘って、大学に行くときに「ママも一緒に連れてってくれ」って言うんですよ。

『ハチミツとクローバー』がちょっと切ない終わり方だったので、よけいに『星のオペラ』で幸せな気持ちになります。

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