『ぽんこさんの暮らしのはてな?』ウルバノヴィチ香苗

SF・科学

ぽんこさんの暮らしのはてな?』は、たぬきの「ぽんこさん」の視点を通して、電子レンジや炭など、普段の暮らしの中にある「はてな?」を解いていきます。

大人の私が読んでも、知らないことがたくさんあって興味深いですし、楽しく学べる本なのでお子さんのいるご家庭にもおすすめです。

著:ウルバノヴィチ香苗
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夏休みの自由研究にもいいかもしれません。

暮らしの中の科学

たぬきの「ぽんこさん」は人間の中で暮らしています。たぬき語と日本語の翻訳家という設定です。

異邦人(動物)であるぽんこさんを通じて見ると、普段の暮らしが科学技術と不思議に満ちていることに気付かされます。

ルームシェアの仲間たちや大家さんも個性的で、彼らの暮らしが本当に楽しそう。

ぽんこさんと暮らすのは、それぞれが好奇心旺盛。家電修理のタドコロさん、司書のフーコさん、シェフのミツオくんと管理人で大家さんの孫のタケシさん。

みんなそれぞれの得意分野があって、日常の「はてな?」に知恵を出し合って調べます。どれも興味深かったのですが、その中でも私が「なるほど~」と思ったのがこの3つ。

電子レンジのはてな?

電子レンジってどうやって食べ物を温めているのか。家電修理のタドコロさんが教えてくれます。電子レンジはマイクロ派によって水分子だけを摩擦して温める仕組みなんですって。
だから、水分のないものは温められないんですね。

湿気と気温のはてな?

学校の先生だった大家さんと気温のお話。
「なぜ、湿度が高いと暑いのか?」それは、汗をかいても蒸発できないから。

液体は蒸発するとき熱を発生させるので、周囲がひんやりします。けれど空中に水分がたくさんあると汗が蒸発できない。そうすると体に熱がこもってしまうため、湿度が高いときでも熱中症には注意が必要。

ちなみに、たぬきのぽんこさん、夏は夏毛に変わることで体温調節をするんですって。

家庭菜園のはてな?

下宿でつくったコンポスト肥料で家庭菜園をつくります。ぽんこさんたちは「コンパニオンプランツ」という、お互いによい効果のある植物を組み合わせて植えています。

植物は虫を避けるために香りを発していますが、耐性がついた虫にはききません。

そこでコンパニオンプランツの香りで虫を遠ざけることができるのだそうです。

他にも植物が放つ微生物が他の植物の生育を促す効果もあるのですって。

先日まで読み終わった上橋菜穂子さんの小説『香君』でも、植物たちの放つ香りで他の植物が育たなくなる話がでてきますので、植物の相性って本当に重要なんですね。

まさに農業は科学。

ほかにもいろいろ「野菜の冷蔵」や「発酵」「レコード録音」など、身の回りの「はてな?」が詰まった一冊です。

ウルバノヴィチ香苗さんについて

ウルバノヴィチ香苗さんはイラストやループアニメなど、幅広いジャンルで活躍されています。彼女の描く世界はとてもやさしくて、読んでいて癒やされます。

江戸の町を舞台にした『まめで四角でやわらかで』は、市井の人々の暮らしがいきいきと描かれていて、こちらもおすすめです。

夫のマテウシュ・ウルバノヴィチさんは新海誠作品の背景を担当したイラストレーター。東京の店を描いた『東京店構え』は日本のレトロ店舗を描いた作品集です。こちらもとてもいい…。


また、夫婦の日常を描いた漫画「いっぷんにぷん」も面白いので、ぜひ単行本化してほしいです。

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