『逃げるは恥だが役に立つ』の作者・海野つなみさんが描く、美しく切ない、未来のおとぎ話『小煌女』。
児童文学『小公女』をモチーフにした未来世紀のお姫様とメイドのお話です。
『小煌女1』あらすじ
未来の地球、英国自治領・ロンドン。各国の上流階級の女子が通うベネディクト女子校に、遠い星テハンの王女・ジノンが侍女のセニンとともに留学してくる。
女子校のハウスメイド・サリーは、ジノンの美しく凛とした風情に憧れを抱く。
その気品と美しさから、たちまち生徒たちはジノンに魅了され、我先に仲良くなろうと策を講じる。
そんな生徒たちの思惑に翻弄され、加重な労働を課されるサリーにも、親切に接してくれるジノン。
やがて、ジノンたちが学園に馴染み始めた頃、政情不安定だった母星テハンが内乱により消滅したとの知らせが入り…
『小煌女』の登場人物
- サリー…ベネディクト女学校のメイド
- ジノン(レベッカ)…惑星トアンの王女、次期女王
- セニン…ジノンの侍女
- オナスン…惑星トアンの首相の息子、女好き
- シクサ…オナスンの補佐
マザーグースと小公女
舞台は未来なのですが、少女たちの思惑や恋心、競争心などは現代と同じ。まあ、人というのは何年たっても本質的には変わらないでしょうね。
そして、英国の生活様式やパブリックスクールの授業の様子、生徒たちのお茶会、クリスマスの風景など、生活描写が詳細でとても楽しい。
ちょっと「あしながおじさん」の女子大の生活風景を思い出しました。
物語のタイトルは「マザーグース」からの引用です。そして、物語は童話「小公女」からインスパイアされたものですが、途中から全く違った物語になっています。
イギリスの階級社会
そして、登場人物たちの鮮やかなことといったら…!
海野つなみ作品には脇役はいません。物語に関わり合う割合が多いか少ないか、それだけです。出て来る少女たちみんなに物語がある。
やはり印象的なのは中流階級の娘、ケイトリンでしょうね。上流階級に屈折したコンプレックスを持っていて、コンプレックスを解消するためサリーたち労働階級に辛く当たります。
それがまたジノンやイライザなど上流階級と軋轢を生じてしまうのです。彼女なりに目的のために必死ではあるのですが…。