『扇島歳時記2』は幕末の「扇島(出島)」を舞台に、遊女になるまえの少女「たま」と出島周辺の人々描いた作品。
「たま」の楽しかった子供時代にも、とうとう終わりがきてしまいます。
『扇島歳時記2』あらすじ
「たま」は出島でトーン先生からもらった鳥のブローチを友だちのように話かけていた。
でも、ある時、ささいな言い争いから鳥はしゃべらなくなってしまう。
姉女郎の咲ノ介は出島の異人・ハルトマンと馴染んでいた。
しかし、この咲ノ介も悲しい人で、身請けの約束をした男から捨てられて死なれ、いつか自分のもとを去るハルトマンに「気を遣る」ほど肩入れしてしまい、不安からかアヘンを常用。
それをハルトマンに知られてふたりは別れることに。
長崎では維新の影響から外国人殺傷や炎上事件が相次ぎ、隠れキリシタンである岩次の同僚も捕まり、岩次は信仰と愛する人との間で揺れる。
初潮への恐怖
物語の最後「たま」に初潮が訪れます。「たま」はその現実に、楽しかった子供時代の終わりと地獄への道行きを思ったのか、激しく動揺します。
出島におると(中略)なんだか自分まで太夫衆じゃねェ者になれそうな気ィがしとおしたの。 でもやっぱり太夫衆にしかなれんのでおす。
この初潮への恐怖、私にも覚えがあります。昔ははおめでたいと赤飯を炊かれたりしましたが、私にとっては恐怖でしか無かった。
女性は性行為を行う前に、初潮の恐怖、破瓜の痛みなど、不安と恐怖を体験しなければなりません。なので、せめて殿方は女性を大事に扱っていただきたいものです。
一昔前の女は、この日から「男と性行為をして、子を産む性」とカテゴライズされるのです。
まだ思春期のはじまりで男性に対して恐怖しかなかったのに、なぜ、祝われねばならないのか。そんな風に思っていました。
特に「たま」は、初潮→客を取るという性行為に直結しますから、かなり怖かったのだと思います。せめて、姉女郎の几帳(『蝶のみちゆき』の主人公)が帰ってきてくれればいいのですが…。
コメント