美しい沖縄の風景の中、ユリを手に持つ少女の足もとには鮮やかな血があふれてる。そんな表紙の絵がひきつけられる。
ひめゆり部隊をモチーフに、少女の空想と戦争の悲惨さを描いた今日マチ子さんの漫画『COCOON』。
沖縄戦。島いちばんの女学校に通うサンは、親友のマユや学校の仲間と共に看護隊として働くことになる。
ウジのわく野戦病院、血の匂い。腐った死体。爆撃で内蔵や首が吹き飛ばされ、死んでゆく仲間たち。
凄惨な戦場という現実の中で、サンは空想という繭でを己の少女性を守ろうとします。
はっきりいいます。読むのがつらいです。
でも、読み始めたらもう、目をそらすことはできません。
そして、よかったら読んでみてください。悲惨な現実と、かわいらしい空想が共存するこの世界を。
女学校でかわいいものや、美しいものに囲まれていたのに、いきなり武骨で悲惨な戦場の様子に怖がるサンに、マユはおまじないをかけてあげます。
「男の人はみんな白い影法師、自分たちは雪空のような繭に守られているー」
やがて戦況の悪化により病院は閉鎖に。学校へ戻ろうとするサンたちですが、彼女たちの進む道には、同胞の遺体が…
さらに悲惨な出来事に遭遇するサン。空想の繭は外側から破られてしまうのでしょうか…
少女と戦争
物語の中で兵士たちは白い、顔のない姿で描かれています。
作者今日マチ子さんはあとがきで「少女時代の潔癖さで、男性の存在がないようなものとしてふるまっていた思い出から」と書かれていました。
私も少女時代、戦争で女性が傷つく話を見聞きするうちに男性が嫌いで、存在しなければいいのに、と思ったことがあります。
空想の繭で守られた少女の世界には、きれいなもの、美しいものしか存在してはならないのです。
読んでいて一番つらかったのは、サンが日本兵に○○○されそうになる場面です。
(嫌いな言葉ですし、ワードめあてでスパムコメントがくるので伏せ字にしてあります)怒りと憤りと、あまりの凄惨さに吐きそうになりました。
実際、こういうことも戦場ではあったのかもしれません。こういう場面を読むと、どうしても冷静になれません。
少女らしい無自覚さと自己中心さ(ネタバレ)
サンを守るのが「親友」のマユでしいた。
マユはサンを悲惨な世界から守るため、彼女の空想の繭糸を何度も何度も補強してやります。そして、彼女を汚し、傷つけようとする者には非常手段もいとわない。
けれど、やがて繭は壊され、蚕は外の世界へ出てゆくことになります。
今日マチ子先生はあとがきで「サンは少女らしい無自覚な自己中心さ発揮して」と書かれていました。
確かに、マユが死んだあとのサンの新しい世界への順応の早さには少し怖いものを感じました。
繭は蚕を守るためだけに存在し、繭の思いは決して蚕には伝わらない。
マユの側からみると、羽化した蚕=サンは繭を振り返らないで生きてゆく。これもまた少女のもつ「無自覚な自己中心さ」の現れなのかもしれません。
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