海野つなみさんといえば『逃げるは恥だが役に立つ』が有名ですが、実は古典をベースにした作品も描いています。
『後宮』は鎌倉時代、後深草院に使えた女官・二条の書いた『とはずがたり』を元に描かれた漫画。彼女の成長とともに体験する、ドロドロの宮中愛憎劇が展開されていきます。
しかし、シリアスな話でも海野先生独特のギャグセンスは健在で、ドロドロ話のよい緩衝材になっています。
『後宮』 あらすじ
後宮の舞台は鎌倉時代、執権北条時宗の頃。蒙古襲来で緊張を深める幕府とは裏腹に、政権を幕府に奪われた貴族は権力争いに明け暮れる。
二条は幼い頃から後深草院(御所様)に養育され、後に御所様に仕えるようになる。
彼女には将来を誓い合った西園寺実兼がいたが、御所様に無理やり妻にされてしまう。
その後も父の死、妊娠、御所様のハラスメントなど、二条はさまざまなトラブルにみまわれてしまい…。
自分の人生を「源氏物語」のように演出すること
鎌倉時代、武士に実権を握られた貴族たちは自分の人生を「源氏物語」のように演出するようになりました。
御所様が二条の処女を無理やり奪ってしまうのも、源氏物語の影響がうかがえます。光源氏と紫の上に自分を重ねようとしたんでしょうね。
御所様は両親に愛されずに育ち、初恋の人「すけ大」に救いを見出していました。しかし、彼女は結婚して彼の元を去ってしまいます。
だから「すけ大」の娘の二条だけはなんとしても!という思いが強すぎて、返って彼女に不信感と不安を与えてしまうのです。
そこにつけこんで多くの男たちに言い寄られる二条。愛情がどんどんもつれ合ってしまします。
しかし、もうすぐ蒙古が襲来してくるってのに貴族たちはのんきに恋愛ゲーム。ヘタすると国ごと無くなる自覚がないんですよね。
政治の実権を武士に握られているから、それしかすることがなかったのかもしれませんが。
1巻目もかなり衝撃的な内容ですが、2巻以降もさらにドロドロと、愛憎が二条の人生に影を落とし始めます。
こちらは杉本苑子さんの『新とはずがたり』。二条はゆるふわな天然という設定で、西園寺実兼視点で描かれています。
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