三浦しをんさんの名作『舟を編む』を、『昭和元禄落語心中』の雲田はるこさんが漫画化。原作を活かしつつ、言葉の世界が魅力的に描かれています。

表紙に描かれているのは辞書編集に使う用例集のカード。
『舟を編む』あらすじ
定年退職を迎える辞書編集者の荒木は、新たな編集者を探していた。部下の西岡から紹介された馬締(まじめ)は几帳面で整理整頓が得意。
そして、言葉を説明するのがとてもうまかった。しかし、この馬締くん、少々変わり者。
「一緒に大渡海(辞書の名前)をやらんか?」という問いに、突然クリスタルキングの「大都会」を歌い出すのだった。
その後、大渡海の編纂に悩むまじめの前に、絶世の美女、香具矢が現れる。大家さんの孫であり板前の彼女に恋をしたまじめは、悩んだ末に長文のラブレターを渡す。
一方、「大渡海」編纂が中止になるという噂をきいた辞書編集部の面々は、それぞれが得意分野を活かして中止を食い止めようとする。
首の皮一枚で「大渡海」編纂は続けられたが、西岡が他部署へ異動になることが決まり…。

漫画ならではの美しい表現
まじめさんや個性豊かな登場人物たちの描写はもちろん、言葉の風景描写がとても美しい漫画でした。
言葉を定義するには、必ず別の言葉を使わなければならない。ひとつバランスが狂うと崩れてしまう微妙な均衡。そんな言葉の塔は、か細い小枝が組み合わされています。
そして、効果音や用語は明朝風の手描きのフォント。これがとても味があって物語の世界にぴったり。
特にラブレターを書いたあとのまじめさんが、かぐやさんを避ける時の「ぴゅ~~~」が最高でした。
まじめとかぐや(と、西岡)
かぐやさんに一目惚れして長い(そして難解なラブレター)を書いたまじめさん。おかげで(?)かぐやさんとは両思いに。
そして、その後のラブシーン!(その結末はおまけの一コマ漫画に…。)
その後のまじめさんの「変化」に気づく西岡くん。西岡くん、まじめさんに負けたくないって思う反面、叶わないとも思っていて。でも、まじめさんは西岡くんがいないとダメだと思っている。
この二人の不器用な友情もすきなんです。
西岡くんと彼女の麗美ちゃんの関係もいいなあ。完全に西岡くんが手のひらで転がされている。というか、包まれている感じ。
『舟を編む』は漫画の他、映画やドラマなど多くのメディアミックスが生まれています。それはきっと、原作の世界観が魅力的だからだと思います。
- 原作『舟を編む』三浦しをん
- 映画『舟を編む』主演:松田龍平
- 漫画『舟を編む 上』雲田はるこ
- 漫画『舟を編む 下』雲田はるこ
- ドラマ『舟を編む~私、辞書つくります~』主演:池田エライザ
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