『言葉の獣』は、言葉の意味を求めてを二人の少女が「言葉の生息地」を旅する物語。同じ言葉でも、人によって意味が違う。
そんな言葉の奥深さと恐ろしさを、架空の獣の森で探していきます。

『言葉の獣』あらすじ
言葉の意味を「獣」として認知できる東雲(しののめ)と、詩が好きで、言葉に興味を抱く薬研(やっけん)。
クラスメイトの東雲はいつも何かをスケッチしている。やっけんは東雲に興味を持ち、絵を見せてもらうと、やっけんからこぼれた「綺麗」という言葉を東雲は絵にしてみせた。
言葉について深く考えるうちに、やっけんと東雲は「言葉の生息地」に迷い込み、言葉の獣たちに出会う。
「言葉の生息地」とは
東雲の共感覚がもたらす森のような異空間。そこでは言葉の感受性の強いやっけんは虎の姿になり、東雲とともに言葉の真意を探す旅にでます。
やっけんが虎なのは虎が「文字の獣」であり、李徴の詩の影響らしい。
やっけんはそこで、一般の「がんばれ」と、自分が思う「がんばれ」の意味の違いを探ることに。一般の「がんばれ」の獣(意味)は大きく包み込む姿なのに対し、自分の「がんばれ」は小さくて非力。
そこには彼女の「無責任に助けられない」という優しさがこめられていたのでした。
同じで違う、言葉の意味
言葉の意味とは何か、同じ言葉でも人によって意味が違います。例えば京都人の「いけず」言葉は、時おり意味が真逆になります。
「お子さん、ピアノ上手にならはったなぁ」は、「ピアノの音がうるさい」の意味です。
このように、一般的な言葉の意味と、人それぞれが使う言葉の意味には隔たりがあり、ふたりは言葉の意味を超えたところにある「真意」を探しに行くのです。
様々な言葉の獣とTwitter(X)という密林
そもそも東雲が思う「美しい獣」とはなにか。それは谷川俊太郎の『生きる』の詩を読んだ時、「心が震える」美しい獣を見たから。
東雲の「美しい」は「心が震える」という意味なのでしょう。
そして二人はいよいよTwitter(X)の世界へ。様々な鳥たちがさえずる世界には、純粋に思いを書き出す「天然の詩」のほか、様々な言葉の獣で満ちていた。
しかし、そこには「誹謗中傷」など醜い獣も存在する危険地帯。ここで二人はどんな獣に出会うのでしょうか。
言葉は日常的で意識せず使うもの。でも、その奥には本当の意味が込められているのです。
それを探すにはひたすら向き合うしかない。そして、そんな風に言葉と向き合ってみたい。

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