『超訳百人一首 うた恋い。』は藤原定家が集めた小倉百人一首を題材に、現代の女子にもわかるように超訳。和歌をベースにした恋愛です。
続編「超訳百人一首 うた恋い。2」は、平安前期の六歌仙の時代にスポットをあて、小野小町、在原業平、文屋康秀の人生と歌を中心に物語が展開します。
小野小町、在原業平、文屋康秀の奇妙な三角関係
出自がしょぼいため、和歌で名をなそうとする康秀。
セレブの家系に生まれて出世するけれど愛に恵まれない業平。
自らの才能と美貌で宮中の花となった小町。
境遇が全く違う3人ですが、和歌を通じて友情関係を築いていきます。
小町と業平といえば美男美女の代名詞ですが、「うた恋い」では不思議とこのふたり、恋愛感情がありません。業平はふざけて小町に言い寄ってますが。
歌詠みとしての誇りをもち、それぞれの和歌を昇華させてゆく、すてきな関係です。康秀と業平の屈折した友情関係も面白い。
小野小町は伝説や謎が多すぎて、あまり生身の人間として感じられないのですが、この漫画の小町は、自分の夢のために愛しい人と別れ、栄華を極めたものの孤独を抱えている女性として描かれています。
物語の最後、業平、康秀と歌枕の旅にでるのですが、実際にこんな旅に出ていたのなら小町も救われただそうなと思います。
在原業平と猫の和歌
呼べば帰ってきてくれると信じているから、遠くはなれていても強くいられるー。
六歌仙たちに比べてやや地味ですが、業平の義兄・行平と弘子さんの夫婦愛もすてきです。
立ち別れ いなばの山の みねにおふる まつとし聞かば 今帰りこむ
実はこの和歌、家出した猫を呼び戻すおまじないとして知られています。この和歌を書いて猫のえさ皿に貼っておくと猫が帰ってくるのだとか。
女性のために贈った和歌が、後の世で猫のおまじないになっている。なんて、行平が聞いたら驚くでしょうね。
着物にまつわる不思議な出来事を描いた「ふるぎぬや紋様帳2」。この漫画でも、行平の和歌は猫が帰ってくる歌として紹介されています。
どうせ買うのならぜひ『うた恋い。2 DVD付特装版』がおすすめです。絵巻DVD「筑波嶺の思ひ出」は、「うた恋い」にでてきた陽成院のおはなし。
在原業平の旅の話に心ときめかせた少年期、退位させられグレてしまった青年期。
ヤンデレな態度をとる自分を見捨てず愛してくれた妻・綏子へ和歌を贈るまでが描かれています。不器用な陽成院の純粋の思いを託した歌。ロマンチックで切ない和歌です。
筑波嶺のみねより落つる みなの川 恋ぞつもりて ふちとなりぬる
うた恋い。シリーズ
『超訳百人一首 うた恋い。』…百人一首選者の藤原定家と式子内親王の恋
『超訳百人一首 うた恋い。2』…在原行平と猫のおまじない和歌
『超訳百人一首 うた恋い。3』…バリキャリ清少納言と愉快な仲間たち
『超訳百人一首 うた恋い。4』…小野篁、紀貫之などマイナー歌人の面白エピソード
『うた恋い。和歌撰 恋いのうた。』…描き下ろし漫画と和歌の解説本
『超訳百人一首 うた恋い。【異聞】うた変。』…ツンデレ院貞明と奥さんのムズキュン恋愛
『超訳百人一首 うた恋い。【異聞】うた変。2』…紫式部のと藤原公任とのバトル
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